第2回はダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩、先発品はプラザキサ(ベーリンガー)です。まだジェネリックは発売されていません。(2020年10月時点)
経口抗凝固薬は長年ワルファリンのみでしたが、ここ数年はNOAC(novel oral anticoagulant:新規経口抗凝固薬)が4種発売され、よく使用されています(あとは3つはリバーロキサバン・エドキサバン・アピキサバンですね)。最近は国際血栓止血学会よりDOAC(direct oral anticoagulants:直接経口抗凝固薬)という名称が推奨されているようなので、当サイトではDOACと呼称します。
基本の添付文書をしっかり読み込んで、進めていきます。
目指せダビガトランマスター! よろしくお願いします。
薬剤師をはじめとした医療従事者向けとして、ダビガトランについて勉強するページになります。一般の方は、自身の病態やお薬については主治医やかかりつけ薬剤師に相談してください。
薬剤師のかたは、情報の正確性には注意していますが、必ず最新の添付文書などを確認し、あくまで補助的に参考にしていただけると嬉しいです。
添付文書以外にも、こちらの本も参考に勉強しています。
(2024/09/10 00:36:42時点 楽天市場調べ-詳細)
(2024/09/10 00:36:42時点 楽天市場調べ-詳細)
ダビガトランの効能又は効果、作用機序
効能・効果のおさらい
【効能又は効果】
非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制【添付文書より】
適応は一つだけです。虚血性脳卒中は、平たく言ってしまえば脳梗塞にあたります。では、「非弁膜症性心房細動」とは何でしょうか。
非弁膜症性心房細動について
まず心房細動についておさらいです。洞結節以外からの異常な電気信号が原因で、電気信号の乱れから心房細動が発生します。心房細動が長時間続くと動悸・息切れの症状が激しくなり、疲れやすくなるなど日常生活に支障をきたします。さらに、心房内でできた血栓が血流にのり、脳塞栓症や全身性塞栓症などを引き起こします。
では、「非弁膜症性」とはどういうことでしょうか。
まず「弁膜症性心房細動」とは、弁に異常がみられるタイプです。人工弁置換(機械弁)とリウマチ性僧帽弁膜症(おもに狭窄症)がこれにあたります。こちらはダビガトランの適応ではありません。これらの疾患にはワルファリンが推奨され、ダビガトランをはじめDOAC使用の安全性に関しては検討中のようです。
「非弁膜症性心房細動」は、上記の弁膜症性心房細動以外のものを指すようです。こちらがダビガトランの適応になります。
心房細動治療ガイドラインによると、「リウマチ性でない僧帽弁閉鎖不全症」や、「僧帽弁修復術後」は非弁膜症性心房細動に分類されるようです。すなわちダビガトランの適応になります。
また、2020年版のガイドラインでは生体弁も非弁膜症性に分類しているようです。
非弁膜症性心房細動の患者にすぐ投与!というわけではありません。投与するかどうかは患者の危険因子などを鑑み、CHADS2(チャッズ・ツー)スコアなどを用いて判断されます。
危険因子 | スコア | |
C | Congestive heart failure/LV dysfunction (心不全、左室機能不全) |
1 |
H | Hypertension(高血圧) | 1 |
A | Age ≧ 75y(75 歳以上) | 1 |
D | Diabetes mellitus(糖尿病) | 1 |
S2 | Stroke/TIA(脳梗塞,TIA の既往) | 2 |
上記の点数を踏まえて、抗血栓療法は以下のように推奨されます。
- 1点以上→DOAC推奨、ワルファリン(年齢によらずINR1.6~2.6、3点以上70歳未満はINR2.0~3.0)考慮可
- 0点で他のリスク因子※あり→DOAC、ワルファリン(年齢によらずINR1.6~2.6)考慮可
※他のリスク因子→心筋症、66~74歳、血管疾患、持続性・永続性心房細動、腎機能障害、体重50kg以下、左房径>45mm
2020年版の不整脈薬物治療ガイドラインを参考にしています。
以前のCHADS2スコアから薬物治療フローが変更になっています。
他にCHA2DS2-VAScスコアなどもありますが、今回の改訂では簡便性なども踏まえてCHADS2スコアを推奨するとされています。
全身性塞栓症について
脳以外の臓器の動脈が遊離血栓によって閉塞するものを全身性塞栓症といいます。心臓、腎臓、消化管、眼などの重要な臓器や四肢の機能不全・壊死を引き起こす可能性があります。心原性脳塞栓症よりは発症リスクは低いです。
下肢や骨盤内の深部静脈に血栓が形成される深部静脈血栓症と、深部静脈血栓が塞栓源となって肺動脈を閉塞する肺塞栓症については、ダビガトランは適応がありません。(他のDOACにはあります)
作用機序の確認
ダビガトランの作用機序を見てみましょう。
活性代謝物であるダビガトランは選択的かつ可逆的にトロンビンの活性部位に結合し、フィブリノゲンからフィブリンに変換するトロンビンの触媒反応を阻害する。【添付文書より】
凝固カスケードを見ていきましょう。
Ⅱa因子がトロンビンです。ダビガトランはこのトロンビンに可逆的に結合することで、フィブリノゲンからフィブリンへの変換を阻害します。
ダビガトランの用法用量・体内動態
ここからはダビガトランの用法用量・体内動態について確認してゆきます。
用法用量(成人)
通常、成人にはダビガトランエテキシラートとして1回150mg(75mgカプセルを2カプセル)を1日2回経口投与する。なお、必要に応じて、ダビガトランエテキシラートとして1回110mg(110mgカプセルを1カプセル)を1日2回投与へ減量すること。【添付文書より】
これだけ見ればすっきりした用法用量ですが、重要なのはこの減量基準です。
用法及び用量に関連する注意
①以下の患者では、ダビガトランの血中濃度が上昇するおそれがあるため、本剤1回110mg1日2回投与を考慮すること。
●中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者
●P-糖蛋白阻害剤(経口剤)を併用している患者②以下のような出血の危険性が高いと判断される患者では、本剤1回110mg1日2回投与を考慮し、慎重に投与すること。
●70歳以上の患者
●消化管出血の既往を有する患者【添付文書より】
「考慮すること」とされていますが、臨床上ではこの基準に引っかかれば即減量していることが多いように思います。そしてこの減量基準を見れば、むしろ減量なしで投与できる患者のほうが少ないのではないでしょうか。「70歳以上」という基準だけで随分患者さんは多いですよね。出血リスクは命に直結するので、患者がこの減量基準に達していないか確認することは非常に重要です。カルテの読み込みや患者からの聞き取りはしっかりしましょう。
クレアチニンクリアランスが中でも重要です。30mL/min未満で禁忌です。
クレアチニン値から推定クレアチニンクリアランスを導き出す計算式(Cockcroft-Gaultの式)を確認しておきます。
男性:(140-年齢)× 体重 /(72 × 血清クレアチニン値)
女性:0.85× (140-年齢)× 体重 /(72 × 血清クレアチニン値)
慣れれば電卓ですぐに計算できます。他にも推定Ccrを必要とする薬剤は多いので、日ごろから訓練しておきましょう。
※若年者や肥満者の場合、実態とのズレ幅が大きくなりやすいことも留意してください。
市販直後調査において、僅か6か月で重篤な出血性副作用のため死亡症例が14例も出ています。投与禁忌であるはずの高度腎機能障害の患者に投与された例も含まれています。
P-糖蛋白阻害剤(経口剤)については、後の相互作用の項目でまとめます。
用法用量(小児)
小児等を対象とした臨床試験は実施していない、と添付文書上の記載です。
DOACの小児への臨床試験はいくつかあるという記事も見かけますが、ダビガトランに関しては吸湿性があり脱カプセルも消化管障害のリスクが高く不可で、小児への投与は難しいのではないかと個人的には思います。
妊婦への投与
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で胎児に移行することが認められている。【添付文書より】
有益性投与となっています。
授乳婦への投与
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが認められている。【添付文書より】
国立成育医療研究センターのHPにおいても、安全に内服できる薬剤のリストには入っていません。
透析患者への投与
【禁忌】
透析患者を含む高度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者
本剤を投与しないこと。ダビガトランの血中濃度が上昇するおそれがある。【添付文書より】
透析患者には禁忌です。用法用量の項目でも説明しましたが、腎機能は必ず確認しましょう。
体内動態
BAは約7%とされています。ダビガトランエテキシラートは消化管から吸収され,活性代謝物ダビガトランに変換されます。代謝はCYPなどをほぼ介しません。
ダビガトランエテキシラートはp糖タンパクの基質であるため、p糖タンパク阻害剤との併用により血中濃度が上昇します。ダビガトランエテキシラートはp糖タンパクを阻害はしません。
主に尿中排泄です。
ダビガトランの注意すべき相互作用
ダビガトランの併用禁忌薬
ダビガトランの禁忌項目から確認します。
【禁忌】イトラコナゾール(経口剤)を投与中の患者【添付文書より】
商品名はイトリゾール(カプセル・内用液)です。抗真菌薬ですね。p糖タンパク阻害剤であるイトリゾールと併用することで、ダビガトランの血中濃度が上昇し、出血リスクが上昇します。
ダビガトランの併用注意薬
おおまかに分けると、以下のようになります。
- 効能効果の重複により出血を助長するおそれがあるもの
- p糖タンパク阻害作用によりダビガトランの効果を増大するもの
- p糖タンパク誘導によりダビガトランの効果を減弱するもの
- 機序不明
効能効果の重複により出血を助長するおそれのあるもの
抗血小板薬(アスピリン等)抗凝固薬(ワルファリンK等)NSAIDs(ジクロフェナク等)が列挙されています。ただし、抗血小板薬と併用するケースは珍しくありません。添付文書の記述も有益性投与のような記述になっています。患者の疾患を確認しましょう。
p糖タンパク阻害作用によりダビガトランの作用を増強するもの
- ベラパミル
- アミオダロン、キニジン、タクロリムス、シクロスポリン、リトナビル、ネルフィナビル、サキナビル、グレカプレビル・ピブレンタスビル配合剤等
- クラリスロマイシン
用法用量の項目でも確認したように、①②は「本剤1回110mg1日2回投与を考慮すること」と記載されています。
③は顕著な影響は出ないもののダビガトランの血中濃度上昇の可能性アリです。
①のベラパミルについては減量以外にも、併用時の投与方法について但し書きがあります。「本剤と同時にベラパミル塩酸塩の併用を開始、もしくは本剤服用中に新たにベラパミル塩酸塩の併用を開始する場合は、併用開始から3日間はベラパミル塩酸塩服用の2時間以上前に本剤を服用させること。」
p糖タンパク誘導作用によりダビガトランの効果を減弱するもの
リファンピシン、カルバマゼピン、セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort,セント・ジョーンズ・ワート)含有食品等、がこれにあたります。
機序不明
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)
この2剤は機序不明であるものの出血の危険性が増大したという報告があるようです。
ダビガトランを調剤する上での留意点
一包化・粉砕・簡易懸濁
一包化・粉砕・簡易懸濁いずれも不適です。
まず吸湿性が高いため、「服用直前に PTP シートから取り出すよう指導すること」とされています。さらにアルミピロー包装のままの調剤が望ましいです。
また、「カプセル剤皮を開け、内容物のみを服用した場合、カプセルでの服用に比べて本
剤の血中濃度が上昇するおそれがある」とあります。
ダビガトランの区分:ハイリスク薬
ダビガトランは特定薬剤管理指導加算1の加算対象となる薬剤です。
(第1回のワルファリンと同じ内容の記事です。)
薬学的管理指導において特に注意すべき項目について、まずはハイリスク薬全般に共通する項目は以下の通りです。
共通する5項目
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認(飲み忘れ時の対応を含む)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認【ハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドラインより】
抗血栓薬について注意すべき項目は以下の通りです。
血液凝固阻止剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認、服薬管理の徹底(検査・手術前・抜歯時の服薬休
止、検査・手術後・抜歯後の服薬再開の確認)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(服用中は出血傾
向となるので、過量投与の兆候(あざ、歯茎からの出血等)の確認とその対策)
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事(納豆等)との相互作用の
確認
6) 日常生活(閉経前の女性に対する生理中の生活指導等)での注意点の指導【ハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドラインより】
服薬指導の要点の項目でもまとめます。
その他ダビガトラン特有の注意事項
効果の指標
本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されていないため、本剤投与中は、血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察すること。【添付文書より】
検査値のみでの把握が困難であるため、出血の徴候を患者自身やご家族にも注意していただく必要があります。
aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は、出血している患者では過度の抗凝固作用を判断する目安となる可能性があるようです。添付文書にも記載されています。
拮抗薬・中和薬
特異的な拮抗薬が存在します。イダルシズマブ(商品名プリズバインド静注液)です。
プリズバインドの効能又は効果は以下のみです。
以下の状況におけるダビガトランの抗凝固作用の中和
生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時
重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時【添付文書より】
ダビガトランの最終内服時間や併用薬(p-gp)などを考慮し、影響下にあると考えられる場合のみに使用できます。
イダルシズマブという名前からも想像がつくように、ダビガトラン及びそのグルクロン酸抱合代謝物と、高い親和性で特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体フラグメント(Fab)です。ダビガトラン以外の薬剤の中和には用いることができません。
2016年11月の発売を受けて、プラザキサの患者用携帯カードが新しいものになりました。プラザキサの内服だけでなく、拮抗薬プリズバインドについても明記されています。ぜひ患者さんにも説明して携帯してもらいましょう。
相互作用以外の禁忌項目
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 透析患者を含む高度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者
- 出血症状のある患者、出血性素因のある患者及び止血障害のある患者[出血を助長するおそれがある。]
- 臨床的に問題となる出血リスクのある器質的病変(6ヶ月以内の出血性脳卒中を含む)の患者
- 脊椎・硬膜外カテーテルを留置している患者及び抜去後1時間以内の患者[外傷性や頻回の穿刺や術後の硬膜外カテーテルの留置によって脊髄血腫や硬膜外血腫の危険性が増大する。]
【添付文書より】
出血患者に対する記載がメインです。
そして記事中で何度も記載していますが、腎機能は必ず確認しましょう。
休薬・中止期間
可能であれば、手術や侵襲的手技の24時間前までに投与中止すること。完全な止血機能を要する大手術を実施する場合や出血の危険性が高い患者を対象とする場合には、手術の2日以上前までの投与中止を考慮し、従来の抗凝固療法と同様に代替療法(ヘパリン等)の使用を考慮すること。【添付文書より】
添付文書には詳細に記載されていませんが、やはり腎機能は要チェックです。プラザキサのポケットガイド表を参考に見てみます。
腎機能 (Ccr,mL/min) |
半減期 (時間) |
中止期間 (出血リスクstandard) |
中止期間 (出血リスクhigh) |
80超 | 13(11~22) | 24時間 | 2~4日 |
50超80以下 | 15(12~34) | 24時間 | 2~4日 |
30超50以下 | 18(13~23) | 48時間 | 4日 |
出血リスクhighとは、完全な止血機能を要する大手術(例として、心臓外科手術、脳外科手術、腹部手術、重要臓器に関連する手術)や腰椎麻酔が挙げられます。ほか高齢であったり、合併症がある、抗血小板薬併用などリスクの高い患者の手術の場合もhighリスクとされます。
ダビガトランの副作用
ダビガトランの副作用について、1%以上のものを抽出してみます。
呼吸器障害
鼻出血が1.3%です。
胃腸障害
消化不良(4.7%)、胃食道炎(3.1%)、悪心(2.8%)、腹部不快感(2.2%)、上腹部痛(1.9%)、心窩部不快感(1.6%)、嘔吐(1.3%)、消化管潰瘍(1.3%)
出血傾向よりも消化器症状のほうが発現率が高いことに留意しましょう。
興味深い論文がありました。服薬指導が有用であったダビガトランによる薬剤性食道潰瘍の 2 例 ダビガトランの食道滞留による薬剤性食道潰瘍に関する報告です。衝撃的な内視鏡画像もあるので、ぜひ時間があれば見てください。
消化器症状を防ぐためにも、しっかりコップ一杯以上の水で内服してもらいましょう。
皮膚及び皮下組織障害
皮下出血(3.1%)
腎及び尿路障害
血尿(1.3%)
全身障害及び投与局所様態
胸痛(2.2%)、浮腫(1.6%)
出血が主な副作用ですが、他の副作用にも注意が必要です。
まとめ・服薬指導の要点
これまで勉強してきたことを踏まえて、服薬指導で伝えたいこと、聞き取りたいことを以下にまとめてゆきます。
併用できない薬剤があること、手術や抜歯の際の服用中止が必要となる場合があること、出血時の中和剤の情報が重要であること、これらも併せて説明すると理解を深められるでしょう。ただし、抗血栓薬中止不要の白内障手術などにおいても、医師から続行指示が出ているにも関わらず、自己判断で内服中止してしまう患者もいます。本当に多いです(泣)。説明の仕方には要注意です。メーカーが発行している患者用資料も活用しましょう。
服薬休止についてのみならず、その後に服薬再開されているかについての確認も重要です。患者本人による再開忘れのケースだけでなく、do処方などに起因する医師サイドの処方漏れも少なくありません。中止忘れよりむしろ再開忘れのほうが多い印象です。薬歴記載・申し送りをきちんとして見つけましょう。
併用薬や術前中止の情報としても有用ですが、ダビガトランには中和薬があるので、大出血で救急搬送された場合などにカードがあると治療方法が変わってきます。
個人的には「人よりも血が止まるのに時間がかかるので」というフレーズが使いやすいです。包丁の取り扱い、自転車の乗車など、具体例を挙げてみるのも有効です。また、避けられる出血についての指導も行いたいところです。
- 歯ブラシは柔らかいものを使用する
- カミソリでなく電動シェーバーを使用する
- 歩きやすく転倒しにくい靴をはく
- 鼻血を防ぐため、鼻は優しくかむ、あまり熱心にほじらない
③については転倒による頭蓋内出血のリスクについても話しておくと、気を付けてくださいます。
花粉症の時期などは特に、④について指導するのに良いでしょう。鼻血がよく出る方には、鼻出血の正しい自己処置について指導しましょう。(首をトントンしない、仰向けにならない、ティッシュを詰め替えすぎない。俯き気味の姿勢で小鼻めがけて指でしっかり圧迫する。案外知らない方が多いです)
西洋オトギリソウを含有しているものは併用しないよう指導が必要です。
出血傾向の確認です。鼻血・歯茎出血などすぐに止血が得られた場合は問題ありませんが、持続する場合はすぐに相談していただく必要があります。皮下出血も小さいものであれば問題ありませんが、「全身」「多発」などがあれば出血傾向の可能性があります。微小すぎる出血のために自己判断で服用中止されることのないよう、注意して指導しましょう。
本剤を服用し忘れた場合、同日中にできるだけ早く1回量を服用するとともに次の服用まで6時間以上空けさせること。服用し忘れた場合でも決して2回量を服用しないよう指導すること。【添付文書より】
大出血時や緊急手術時には、半減期が短いことはメリットとなります(体内から早く消失するため)。しかし、内服忘れによる効果減少という面から考えれば、半減期が短いことはデメリットです。
コップ一杯程度の水は必須です。消化器症状のリスクが高まります。
あとは、併用禁忌薬・併用注意薬がないかしっかり確認しましょう!
参考資料・おすすめ本
今回の勉強に使用した本を紹介します。
新人薬剤師・復帰薬剤師にまずおすすめの本がこちらです。
(2024/09/10 00:36:42時点 楽天市場調べ-詳細)
このページではダビガトランについてごちゃごちゃ書きましたが、この本にだいたいすべての薬剤についての指導事項がすっきり纏まっています。服薬指導マニュアルは薬剤師必携の一冊でしょう。いざ初めて指導する薬について指導のポイントを調べるときに、間違いなく役に立ちます。
(2024/09/10 00:36:42時点 楽天市場調べ-詳細)
薬がみえるシリーズは、特に復帰薬剤師にとって有用だと思います。国家試験直後の新人薬剤師には復習にとてもいいです。薬効・薬理を中心に、注意事項や指導項目などがわかりやすいイラスト入りでまとまっています。フルカラーでこのボリュームで、相当にコスパのいい「薬の教科書」です。vol.1に抗血栓薬について記載があります。
添付文書を中心に「薬がみえる」で復習し、「服薬指導マニュアル」で患者対応をシュミレートすると、良質な指導ができるでしょう。
さいごに
ダビガトランについて勉強しましたが、いかがでしょうか。
一包化ができない、消化器症状のリスクが高い、カプセルが大きく飲みにくい、といった理由から他のDOACに押されがちとはいえ、重要な薬剤であることには変わりありません。
あくまで私の勉強ノートになりますが、きちんと添付文書やインタビューフォームを参照しながら、指導に役立てていただければ嬉しいです。
前回はワルファリンについてまとめているので、よければこちらもお読みください。