ワルファリンカリウムは、古くから抗凝固薬として使用されています。
ハイリスク薬でもあり正確に把握しておくべき薬剤です。薬剤師業務に必要な知識を、基本事項を確認しつつ、勉強して掘り下げながらまとめてゆきます。
めざせワルファリンマスター! いきなり長い記事になりますが、よろしくお願いします。
薬剤師をはじめとした医療従事者向けとして、ワルファリンについて勉強するページになります。一般の方は、自身の病態やお薬については主治医やかかりつけ薬剤師に相談してください。
薬剤師のかたは、情報の正確性には注意していますが、必ず添付文書などをしっかり読んで、あくまで補助的に参考にしていただけると嬉しいです。
ワルファリンの効能又は効果、作用機序
効能又は効果のおさらい
血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防【添付文書より】
ワーファリン、ほかワルファリンK錠「〇〇」も同様の文言であり、差はありません。
ワーファリンは正確に言えば先発品とは異なりますが、それは後述します。
血栓症とは
血栓症は、動脈血栓症と静脈血栓症に区分されます。
★動脈血栓症は血流の速い環境下での血栓症です。アテローム梗塞巣などにおいて、乱流により血小板が活性化され血栓が生じます。凝集した血小板が白く見えるため、白色血栓と呼称することがあります。代表的な疾患は以下の通りです。
- 心筋梗塞
- 脳梗塞(※心房細動を原因とする脳梗塞を除く)
- 閉塞性動脈硬化症(に起因する血栓症)
これら血小板凝集が原因となる疾患には「抗血小板薬」が使用されます。低用量アスピリンなどです。
★静脈血栓症は血流の遅い環境下での血栓症です。血流のうっ滞により凝固が活性化された場合に血栓が生じます。フィブリンの含有量が多い血栓であり、その血流の遅さにより多くの赤血球を巻き込み、赤色血栓と呼称されることもあります。代表的な疾患は以下の通りです。
- 深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)
- 肺塞栓(pulmonary empolism:PE)
- 心房細動(atrial fibrillation:Af)が原因の脳梗塞
肺動脈に血栓ができる肺塞栓症ですが、大動脈と異なり血流が遅いため、静脈血栓症に分類されます。他、門脈血栓症、脳静脈洞血栓症、腸間膜静脈血栓症なども静脈血栓症に含まれます。
これら凝固による血栓が原因となる疾患には「抗凝固薬」が使用されます。
ワルファリンは凝固因子の産生抑制薬であり、静脈血栓症に使用されます。
ただし添付文書にある「心筋梗塞」は動脈血栓症に分類されます。通常、心筋梗塞には低用量アスピリンをはじめとした抗血小板薬が使用されますが、心房細動合併症例などの場合にはワルファリンも適応となります。
心筋梗塞に対する第一選択の標準治療はアスピリンに代表される抗血小板療法であり、ワルファリン療法は心筋梗塞に加え、心房細動を合併する症例、人工弁置換術後の症例あるいは左室内血栓を有する症例などが適応とされる。【エーザイHPより】
低用量アスピリンなどの抗血小板薬とワルファリンの併用を不安がる患者さんもいます。ついどちらも「血をサラサラにする薬」と説明しがちですが、いざ違いを聞かれた際に説明するのは難しいですね。
患者さんの理解度や疾患に合わせて、このように説明したことがあります。その方はよく納得してくださいましたが、とっさに自分の言葉で説明できるようにかみ砕いておく必要があります。
作用機序の確認
ワルファリンの作用機序を再確認します。
本薬は、ビタミンK作用に拮抗し肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子(プロトロンビン、第Ⅶ、第Ⅸ、及び第Ⅹ因子)の生合成を抑制して抗凝固効果及び抗血栓効果を発揮する。
また、本薬によって血中に遊離するPIVKA(Protein induced by Vitamin K absence or antagonist:プロトロンビン前駆体)が増加することにより抗凝固作用及び血栓形成抑制作用を持つ。【添付文書より】
凝固カスケードのおさらいです。苦手ですが、把握しておくことで他の抗凝固薬や拮抗薬への理解も深まります。久々に自分でカスケードを書きましたが、我ながら目が滑ります。
ワルファリンはビタミンKと類似構造を持ちます。肝臓でビタミンKと拮抗することで、ビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ)の産生を阻害します。(語呂合わせは「肉納豆」でしたね)図中における黄色マーカーを引いた部分です。
通常では肝臓において、ビタミンK依存性カルボキシラーゼが凝固因子タンパク質の第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子のグルタミン酸をγ-カルボキシル化し、凝固能を有したタンパク質へ変換しますが、これを阻害するのがワルファリンです。
ここでカルボキシル化されなかった凝固因子タンパク質は凝固活性をもちません、これがPIVKA(protein induced by vitamin K absence or antagonists)です。
ちなみに、ビタミンKのKは「 Koagulation」という血液凝固を意味するドイツ語(諸説あるようですが)に由来しています。
ビタミンK依存性の凝固因子を阻害するという特性上、ビタミンKが拮抗薬になります。後述でまとめます。
ワルファリンの用法用量、体内動態
用法用量(成人)
本剤は、血液凝固能検査(プロトロンビン時間及びトロンボテスト)の検査値に基づいて、本剤の投与量を決定し、血液凝固能管理を十分に行いつつ使用する薬剤である。
初回投与量を1日1回経口投与した後、数日間かけて血液凝固能検査で目標治療域に入るように用量調節し、維持投与量を決定する。
ワルファリンに対する感受性には個体差が大きく、同一個人でも変化することがあるため、定期的に血液凝固能検査を行い、維持投与量を必要に応じて調節すること。
抗凝固効果の発現を急ぐ場合には、初回投与時ヘパリン等の併用を考慮する。
成人における初回投与量は、ワルファリンカリウムとして、通常1~5mg1日1回である。
【添付文書より】
通常、PT-INR(Prothrombin Time-International Normalized Ratio:プロトロンビン時間−国際標準化比)がワルファリンコントロールの指標として用いられます。
NVAF(非弁膜症性心房細動)を持つ脳梗塞またはTIA(一過性脳虚血発作)患者に対する再発予防のワルファリンによる抗凝固療法は、INR2.0~3.0の範囲でコントロールすることが強く勧められる(グレードA)
ワルファリン療法の強度は、一般的にはPT-INR2.0~3.0が強く勧められるが、高齢(70歳以上)のNVAF患者では、1.6~2.6にとどめることが勧められる(グレードB)
【脳卒中治療ガイドライン2015年版より】
上記は脳卒中ガイドライン上での目標値ですが、患者や疾患によってガイドラインで推奨されているINR値が異なります。おおまかに、高度な抗凝固効果を目指す場合には「確実な2.0越え」、軽度の抗凝固効果を目指す場合は「基本的には2.0越え」といった意味合いで考えられています。心房細動への服用例では、INR2.0未満になると血栓症発症の危険性が高まるという報告があるようです。
ワルファリン製剤の錠剤規格は、0.5mg、1mg、5mgが存在します。顆粒製剤も販売されており、定期的な血液検査のもと調整が行われます。
隔日処方などもよく行われるため、調剤・監査の際は投与量だけでなく処方日数に注意が必要です。また患者が隔日投与に対して理解十分か、きちんと確認しなければ重大な事故につながります。
投与初期に「数日かけて調節」とあるのは、凝固因子によって半減期が異なるせいでもあります。例えば第Ⅷ因子は半減期0.4~0.7時間と短いですが、第Ⅱ因子は10~15時間と長めです。
https://www.aandt.co.jp/jpn/tree/vol_7.htm
検査試薬等のメーカーA&Tのサイトで、PT-INRについて詳しくまとめられています
用法用量(小児)
小児における維持投与量(mg/kg/日)の目安を以下に示す。
12ヵ月未満:0.16mg/kg/日
1歳以上15歳未満:0.04~0.10mg/kg/【添付文書より】
小児科における目標PT-INR値は疾患や国によって異なるようです。(例:日本での川崎病による冠動脈後遺症では1.6~2.5)
妊婦への投与
妊娠中または妊娠の可能性のある女性に対しては禁忌です。
胎盤を通過し、軟骨形成不全や、神経系の異常、胎児の出血傾向に伴う死亡の報告があります。分娩時の異常出血が現れることもあります。
授乳婦への投与
添付文書上は「本剤投与中の授乳婦には授乳を避けさせること。ヒト母乳中に移行し、新生児に予期しない出血があらわれることがある。」とあります。
しかしインタビューフォームを参照してみると以下の通りです。
臨床例では、ワルファリンを服用している授乳婦において乳汁移行を検討したが、母乳中にワルファリンは検出されなかったとの報告がある。
ただし、新生児は元来ビタミンK欠乏状態であることや、母乳中の濃度が低くても哺乳量は大量になるので、ワルファリン服用下の授乳は新生児の低プロトロンビン血症の誘因となる可能性はある。ワルファリンを服用させている患者の授乳には注意をすべきであり、新生児及び乳児には低プロトロンビン血症に注意し、必要に応じてビタミンK 2 シロップの投与をすべきである。
また、国立成育医療研究センターHPに掲載されている「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」のリストにもワルファリンは収載されています。
透析患者への投与
PT-INRを指標として投与量が決定される薬剤のため、減量の必要はないと言われています。
体内動態
PT-INRを指標として投与量が調整される薬剤のため、代謝については軽くまとめる程度にしておきます。
BAはほぼ100%であり、肝初回通過効果も程度が低いと考えられています。S-ワルファリンはCYP2C9により、R-ワルファリンはCYP1A2,3A4により代謝されます。尿中には投与量のうち1/3が排泄されますが、未変化体はほぼ存在しません。
詳細が必要な場合はインタビューフォームを参照してください。
ワルファリンの注意すべき相互作用
ワルファリンが臨床で使用が難しい理由の中に、多岐にわたる相互作用があります。日常の調剤で毎日のように触る薬ですから、しっかり把握しておかないといけません。
警告・禁忌項目から併用薬について抜き出します。
【警告】本剤とカペシタビンとの併用により、本剤の作用が増強し、出血が発現し死亡に至ったとの報告がある。併用する場合には血液凝固能検査を定期的に行い、必要に応じ適切な処置を行うこと。【添付文書より】
カペシタビン(商品名:ゼローダ)の添付文書の警告欄には「これらの副作用は、本剤とワルファリンカリウムの併用開始数日後から本剤投与中止後1ヶ月以内の期間に発現している」という記述もあります。
- 手術不能又は再発乳癌
- 結腸・直腸癌
- 胃癌
ゼローダの適応は上記3つです。いずれも稀ながんではないので、お薬手帳や他科受診などしっかり注意して見る必要があります。
【禁忌】骨粗鬆症治療用ビタミンK2(メナテトレノン)製剤を投与中の患者
イグラチモドを投与中の患者
ミコナゾール(ゲル剤・注射剤・錠剤)を投与中の患者【添付文書より】
①骨粗鬆症治療用ビタミンK2(メナテトレノン)→先発品:グラケー
メナテトレノンに関しては、「骨粗鬆症治療用」のフレーズもポイントになります。ビタミンK2製剤は他にもケイツーカプセルがありますが、こちらは「クマリン系殺鼠剤中毒時に起こる低プロトロンビン血症」に対して適応をとっています。ワルファリンもクマリン系殺鼠剤のうちですね。対してグラケーは「骨粗鬆症における骨量・疼痛の改善」にしか適応がありません。
②イグラモチド→商品名:ケアラム、コルベット
いずれも関節リウマチ治療に用いられる免疫調節薬です。機序不明ですが、「ワルファリンの作用が増強され、重篤な出血をきたした症例が報告されている」とのことです。
③ミコナゾール→先発品:フロリードゲル経口用、フロリードF注、オラビ錠口腔用
ミコナゾールがワルファリンの肝薬物代謝酵素(CYP2C9)を阻害するため、ワルファリンの作用が増強します。フロリード製剤でも膣剤・クリーム剤は併用注意に留まります。フロリードゲル剤は「経口製剤」であり、禁忌にあたります。
ほか、ワルファリンの相互作用はかなり多岐にわたります!
抗血小板薬併用による出血傾向、NSAIDs併用での消化管出血のリスク上昇、CYP2C9阻害によるワルファリン血中濃度上昇、ほかにも様々です。一度しっかり添付文書の併用注意欄にも目を通し、患者に対して出血傾向の確認を都度行うことが重要です。血液検査の結果を見ることができる場合は、チェックしておきましょう。
ワルファリンを調剤する上での留意点
ワルファリンの薬価収載区分
ワーファリン錠は正確に言えば先発品ではありません。薬価収載された薬剤は「先発品」「後発品」「準先発品」「空欄(区分なし)」と区別されますが、発売がかなり昔のワーファリンは「空欄(区分なし)」となります。しかもその中でも「局方品」となります。そのためワルファリンカリウムの錠剤は全て先発品扱いとなります。
ワルファリンカリウムの錠剤は、ワーファリン錠以外にワルファリンK錠「テバ」「NP」などのブランドから発売されていますが、「ワーファリン」と銘柄指定処方をされた場合は「テバ」「NP」等への変更調剤はできません。また、ワルファリンK「NP」などの銘柄処方をされた場合も、ワーファリンに変更調剤することはできません。
しかし一般名処方の場合は、ワーファリン錠やワルファリンK錠「テバ」「NP」等、自由に選択できます。
このような局方品は、ほかにプレドニン錠や、プレドニゾロン錠「NP」なども該当します。
以下のサイトで薬価収載上の区分について詳しく解説されています。
後発医薬品への変更調剤(区分なし・準先発品)【ファーマシスタ】
一包化・粉砕・簡易懸濁
光にやや弱い薬剤です。
インタビューフォームにも記載があるように、光源下において徐々に着色(黄変)し、含量の若干の低下傾向が認められるようです。室内灯でも変色します。一包化も粉砕も可能ですが、長期処方の場合は遮光指導をしたいところです。薬袋に入れて保管しておくだけでも違いますが、一か月を超える長期処方となると「引き出しにしまう」「缶で保管する」または遮光袋を渡す、などの指導をしましょう。遮光袋を交付することで患者の理解を得られやすいです。
簡易懸濁に関してはメーカーからは公には推奨されていないようですが、臨床上ではよく行われます。水・ぬるま湯(55℃)で溶解します。
ワルファリンの区分:ハイリスク薬
ワルファリンは特定薬剤管理指導加算1の加算対象となる薬剤です。
薬学的管理指導において特に注意すべき項目について、まずはハイリスク薬全般に共通する項目は以下の通りです。
共通する5項目
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認(飲み忘れ時の対応を含む)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認【ハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドラインより】
抗血栓薬について注意すべき項目は以下の通りです。
血液凝固阻止剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認、服薬管理の徹底(検査・手術前・抜歯時の服薬休
止、検査・手術後・抜歯後の服薬再開の確認)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(服用中は出血傾
向となるので、過量投与の兆候(あざ、歯茎からの出血等)の確認とその対策)
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事(納豆等)との相互作用の
確認
6) 日常生活(閉経前の女性に対する生理中の生活指導等)での注意点の指導【ハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドラインより】
詳しくは項目「服薬指導の要点」で掘り下げます。
その他ワルファリン特有の注意事項
拮抗薬・中和薬
ビタミンK製剤が主な中和薬となります。症例によるので一律の処置とはなりませんが、おおむね以下の流れになります。
- ワルファリンの中止
- 凝固能の測定
- ビタミンK投与
- 凝固因子製剤の投与
ワルファリンの中止はもちろん即効性はありません。
小出血の際は、経口でビタミンKが投与されます。
ビタミンK1製剤としてフィトナジオン(カチーフN・ケーワン)、ビタミンK2製剤としてメナテトレノン(ケイツーカプセル)が使用されます。いずれもワルファリンの拮抗投与に適応があります。
大出血の際は、ビタミンK2の注射製剤(ケイツーN静注)が使用されます。
ただしこちらの添付文書にも「投与後約3時間を経て効果を発現するので、速効性が期待できないことに留意すること。重篤な出血が見られる場合には、本剤の投与と共に新鮮凍結血漿の輸注等の適切な処置を行うこと。」の記述があります。
緊急な重篤出血の場合は、ケイセントラ静注用が用いられます。
2017年に発売された、「ビタミンK拮抗薬投与中の患者における、急性重篤出血時、又は重大な出血が予想される緊急を要する手術・処置の施行時の出血傾向の抑制」のみに適応を持つ薬剤です。乾燥濃縮人プロトロンビン複合体製剤で、ビタミンK依存性凝固因子(第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子)に加えて、プロテインC(PC)とプロテインS(PS)を含みます。PCやPSは凝固抑制因子(抗凝固系)ですが、これらもワルファリンにより減少することが知られています。これらを補充することで、生理的凝固阻止機能(微出血にかかわる)をも回復させることが可能となっています。
メーカーからも患者用持ち歩きカードが配布されています。有効活用しましょう。
抗凝固作用を持つPC,PSは半減期が短いという特徴があります。ワルファリン開始直後はプロテインC,Sが先に阻害されるため、一過的に過凝固の状態となります。(paradoxical hypercoagulability)
そのため、投与開始数日はヘパリンの併用が必要なのですね。
食事との相互作用
ビタミンKの少量摂取は必要ですが、大量摂取はワルファリンの薬効に影響を与えます。特に注意が必要なものを挙げます。
- 納豆
- クロレラ食品、青汁、西洋オトギリソウ
- 大量の緑黄色野菜
特に納豆は、ビタミンK合成能力の強いBacillus subtilisを含むので要注意です。腸内でビタミンKを合成すると言われています。
アルコールも控える必要があります。少量のアルコールで代謝酵素が賦活され、大量のアルコールで減弱します。
相互作用以外の禁忌項目
出血している患者(血小板減少性紫斑病、血管障害による出血傾向、血友病その他の血液凝固障害、月経期間中、手術時、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、流早産・分娩直後等性器出血を伴う妊産褥婦、頭蓋内出血の疑いのある患者等)[本剤を投与するとその作用機序より出血を助長することがあり、ときには致命的になることもある。]
出血する可能性のある患者(内臓腫瘍、消化管の憩室炎、大腸炎、亜急性細菌性心内膜炎、重症高血圧症、重症糖尿病の患者等)[出血している患者同様に血管や内臓等の障害箇所に出血が起こることがある。]
重篤な腎障害のある患者(本剤の代謝・排泄の遅延で出血することがある。)
重篤な肝障害のある患者(ビタミンK依存性凝固因子は肝臓で産生されるので、これが抑制され出血することがある。また、本剤の代謝・排泄の遅延で出血することがある。)
中枢神経系の手術又は外傷後日の浅い患者[出血を助長することがあり、ときには致命的になることもある。]
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
妊婦又は妊娠している可能性のある女性
いずれも重要項目です。
まとめ・服薬指導の要点
これまで勉強してきたことを踏まえて、服薬指導で伝えたいこと、聞き取りたいことを以下にまとめてゆきます。
併用注意の薬剤が多いこと、手術や抜歯の際の服用中止が必要となる場合があること、出血時の中和剤の情報が重要であること、これらも併せて説明すると理解を深められるでしょう。ただし、抗血栓薬中止不要の白内障手術などにおいても、医師から続行指示が出ているにも関わらず、自己判断で内服中止してしまう患者もいます。本当に多いです(泣)。説明の仕方には要注意です。メーカーが発行している患者用資料も活用しましょう。
服薬休止についてのみならず、その後に服薬再開されているかについての確認も重要です。患者本人による再開忘れのケースだけでなく、do処方などに起因する医師サイドの処方漏れも少なくありません。一包化されている患者の場合、病院におまかせで本人は内服しているつもりだったが処方薬には入っていなかった、というパターンは実際にあります。中止忘れよりむしろ再開忘れのほうが多い印象です。薬歴記載・申し送りをきちんとして見つけましょう。
併用薬や術前中止の情報としても有用ですが、ワルファリンには中和薬があるので、大出血で救急搬送された場合などにカードがあると治療方法が変わってきます。
個人的には「人よりも血が止まるのに時間がかかるので」というフレーズが使いやすいです。包丁の取り扱い、自転車の乗車など、具体例を挙げてみるのも有効です。また、避けられる出血についての指導も行いたいところです。
- 歯ブラシは柔らかいものを使用する
- カミソリでなく電動シェーバーを使用する
- 歩きやすく転倒しにくい靴をはく
- 鼻血を防ぐため、鼻は優しくかむ、あまり熱心にほじらない
③については転倒による頭蓋内出血のリスクについても話しておくと、気を付けてくださいます。
花粉症の時期などは特に、④について指導するのに良いでしょう。鼻血がよく出る方には、鼻出血の正しい自己処置について指導しましょう。(首をトントンしない、仰向けにならない、ティッシュを詰め替えすぎない。俯き気味の姿勢で小鼻めがけて指でしっかり圧迫する。案外知らない方が多いです)
一度説明を聞いて納得していても、うっかり忘れて納豆を毎日食べ始めてしまったケースもあります。サプリメントも要注意です。
妊婦には禁忌の薬剤です。
出血傾向の確認です。鼻血・歯茎出血などすぐに止血が得られた場合は問題ありませんが、持続する場合はすぐに相談していただく必要があります。皮下出血も小さいものであれば問題ありませんが、「全身」「多発」などがあれば出血傾向の可能性があります。微小すぎる出血のために自己判断で服用中止されることのないよう、注意して指導しましょう。
基本的には思い出したタイミングですぐに内服するように、ただ半日以上経過していた場合はスキップするように指導しましょう。一度に2回分をまとめて内服してしまうことで、出血リスクの増加のおそれがあります。
凝固能の検査がされているか、チェックが必要です。調剤薬局の場合、採血結果を患者が持っていれば、ぜひ見せてもらって記録しておきましょう。
参考資料・おすすめ本・リンク
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添付文書を中心に「薬がみえる」で復習し、「服薬指導マニュアル」で患者対応をシュミレートすると、とても上質な指導ができるでしょう。
さいごに
ワルファリンについてまとめましたが、いかがでしょうか。臨床で見ない日のない薬であり、注意事項の非常に多い薬剤です。
あくまで私の勉強ノートになりますが、きちんと添付文書やインタビューフォームを参照しながら、指導に役立てていただければ嬉しいです。